まぼろしのカステラ　川村たかし作　京田信太良画　　　実業之日本社

〈解説文は全て、私ぽんちゃんが独自で書いております。あくまで私見の為、無断使用はご遠慮下さい。〉★1972年再販発行。函、ビニカバ付。★函＝背ヤケ、角スレ、背と小口側に小破れ亀裂、　　　表面全体に保管上のスレ傷汚れ有。★ビニカバ＝背の天地に小破れ有。★本体＝三方に経年ヤケ、シミ汚れ有。本文内　　　　紙面黄変、周辺部ヤケ、薄く汚れのある　　　　ページ有。　　　　見返しに記入有。画像参照。★★上記以外、本文内目立つ濃い汚れ等なく、製本は堅牢で、ご愛読に支障は御座いません。然し乍ら、53年経過の本です。経年感等気になる方はお避け下さい。　川村たかし氏といえば、全十巻からなる大作「新十津川物語」が有名ですが、こちらはまた、一冊完結とはいえ中々に骨太な物語です。　　美味しい手作り菓子を商う、奈須玉泉堂の主人の玉吉が、突っ込んできたダンプに撥ねられて重体に陥った所から物語が動き始めます。　玉吉の二人の息子、中学生の琢磨と、小学5年の裕記は、意識の戻らない父を案じて、不安で一杯です。　何せ、主人がアンコから手作りしていた菓子屋の為、商売がストップしてしまい、空っぽのショーケースを前に競合店の店主が鵜の目鷹の目で店を狙い始める始末です。　弟の裕記は、がらんとした菓子作りの仕事場を見て、自分達で饅頭を作ろう、と言い出します。祖母のセイは、そんな簡単なものではない、アンコだけでも修行に10年かかる、と反対するのですが。　意識は戻ったものの、動けない父親に代わって兄弟の菓子作りの奮闘が始まります。シュークリームもカステラも並べていた玉泉堂ですが、先ずは饅頭一品からの復帰を目指します。　読んでいて、和菓子の難しさ、アンコひとつ取ってみても手間隙のかけようが凄いことが分かります。確かに、お饅頭はシンプルな外見ながら、老舗の和菓子屋さんのと、スーパーで売っているのでは、甘さのくどくなさも、香りも全然違いますものね。　回復して戻った父に、難関だった長崎カステラを焼いてみせ、自分は進学せずに菓子作りを勉強したいと言う琢磨。父も心から認めるラストシーンは、焼きたてのカステラよりも暖かい気持ちにさせてくれます。　状態は、上記★書きと、画像よりご判断下さい。古書にご理解のある方との、嬉しいご縁を心よりお待ち致しております。